今年はイタリアのあちこちの遺跡や建造物が修復中で、パンフレットやポスターで見るようなおなじみの外観を見ることができないところも多くありました。
トレビの泉もその一つで、ぐるりは鉄の足場で囲まれており、水は抜かれ、修復作業中の箇所はシートで覆われていました。それでも、世界中からの観光客は必ず訪れる名所であることには変わりなく、泉のまわりはものすごい人の波です。修復中の泉を見るためにも列に並ばなくてはなりません。うっかりするとはぐれてしまうし、持ち物はスリや引ったくりに気をつけねばならず、ヒヤヒヤしながら進んでいきます。毎度、ここへ来るたび泉にコインを投げ入れ、いつの日かまた再訪できるように願うのですが、前回の願いが叶ったのだと思うと、少し感動して、またこの次もと贅沢な願いをかけてしまうのです。ところが、修復中で水のない泉、今回はもうコインを投げることも無理なのかと思っていたら、ありました!ぐるりと一周して、順路出口に出ると、急ごしらえの1㎡ほどの容器(?)に浅く水が張られ、そこに向かって皆後ろ向きになり、コインを投げ入れています。なんだかあまりありがたくはない仮の泉とも言えぬ「賽銭箱」に向かって、それでもまたいつの日かの再訪を期待して、コインを投げ入れてきました。
やはりザーッと噴水が出て、水がなみなみと溢れていないと頼りないですね…
ローマは地下鉄があるので、ヴァチカンへも地下鉄で簡単に行くことができます。カトリックの総本山、キリスト教の歴史そのものであるヴァチカンはローマを訪れた際に決して素通りすることはできません。今ではヴァチカンも、サンピエトロ寺院も開かれており、何も行事がなければいつでも、誰でもが入ることができます。ミケランジェロが大好きな私は、サンピエトロ寺院の入り口入って右手すぐのところにある「ピエタ像」を見るのを楽しみにしていました。ところが、間が悪いことにその日はたまたま教会の行事があり、関係者以外は立ち入ることができないということで、大変残念な思いをしました。
仕方がないので、寺院前の広場の真ん中に立って、建物の屋根の上の聖人像を一つ一つ眺めていきます。この日は本当に天気も良く、やはり多くの人が広場を散策し、写真を撮っていました。ベルニーニによって設計されたバロック形式の楕円形のこの広場はかなりの面積があるのですが、以前丁度復活祭(イースター)に訪れた時はこの広場は人で埋め尽くされ、広場に入ることすらできなかったことを思い出しました。この時とばかりに、私は映画「天使と悪魔」に出てくるオベリスク脇のポイントなどをしっかりとチェックして、映画を思い出しながらこの足でじっくりと踏みしめて満足しました。
これでも人は少ない方です
柱廊の屋根には140体もの聖人像が広場を見下ろしています。それぞれの高さは3m以上あります
その後はヴァチカン博物館に入場しました。この博物館も古代オリエント時代から現在に至る絵画、彫刻、タペストリー等の美術品から工芸品、地図等の実用品までさまざまな文化遺産のコレクションが収蔵、一般公開されています。その数は膨大で、館内は20以上のエリアにわかれ、一日で回りきることは到底不可能です。そしていつもだいたい駆け足で見て回ることになります。今はオーディオガイド(7€)も借りられるので、まず自分のお目当ての作品を事前に決めておき、効率良く回らないと時間はいくらあっても足りません。本当に、今度ローマに来たら、一日中かけてゆっくり見学しよう、いつもそう思いながらヴァチカンを後にすることになります。
システィーナ礼拝堂のミケランジェロの天井画と壁画は修復も終わり、大変鮮やかな色彩を取り戻していました。何度見ても、見飽きることのないその迫力と荘厳さ・・・座り込んで見ている人も大勢いました。礼拝堂いっぱいの人が皆無言でただただ見上げるだけです。圧倒的な作品を前にして、言葉にならない、できない感覚としか言いようがありません。
博物館の途中何箇所かと出口付近にはグッズや本の売店があります。これを見ているだけでも面白く、グッズもいろいろ欲しくなります。以前こちらで薔薇の実のロザリオを買って帰りました。それは今でも箱から取り出すととてもいい香りがします。今回は購入しませんでしたが、ロザリオのデザインなどにも流行りがあるらしく、最近は玉の小さなものが人気だと売店の人から聞きました。
後ろ髪を引かれながら、博物館を出て、歩いていると、通用門の奥に立つヴァチカン衛兵の姿が見えました。ミケランジェロがデザインしたと言われる制服を身に着けたその姿は凛として、その周りの空気だけふっと中世に戻ったような錯覚すら覚える、不思議な光景、不思議なひと時でした。
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