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つれづれなるままに引き出しを開けると、自分でも忘れていたものを思い出したり… ぴったりの処方箋が見つかったり…
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水島新司

水島漫画は私にとって特別なものです。
数あるお気に入りの漫画群の中で、特別な位置を占めています。中でも「ドカベン」「あぶさん」「野球狂の詩」はその名前を聞いた瞬間に、懐かしさと共に今となっては完全に黒歴史と化した私の過去の記憶、青春時代を呼び戻してくれるのです。
私の二次創作の歴史は「ドカベン」から始まりました。あれほど一つの漫画を読みこんだのは初めてでした。野球のルールや用語も全てこの漫画で覚えて、詳しくなりました。お気に入りのキャラやコマを毎日のように模写して見なくても描けるようになり(特にあの絵柄を再現することに熱意を注いでました)、ストーリーを覚え、セリフを覚え、そうしてそれらで遊ぶ、つまり二次創作というものに目覚めたのです!
初めて同人誌を購入し、自分も参加するようになったのも「ドカベン」からです。当時この漫画の同人があったのも今思えば驚きですが…それも一つや二つではなく、レベルもかなりのものでした。ただその頃は現在のようにネットサイトもなく、同人活動も内容も全くわからないまま手紙と郵便小為替を送るとオフセット印刷の同人誌が郵送されてきて、自分もまた原稿を郵送する、という非常にアナログで悠長なやり取りでしたが、家に郵送されてくるのが楽しみで、毎日ワクワク郵便受けを覗きに行ったものでした。周りに熱く語れなくても、周りに理解者がいなくても、ここ(同人)では日本全国の見ず知らずの人と繋がり、同じ思いを語り、ネタに爆笑することができる・・・なんという素晴らしいことでしょう。私の人生で新しい扉が開かれた瞬間でした。
一つの漫画を元に、いろいろなネタが次々と浮かんで、技術もないのになんとかそれを具体化しようと必死でした。CMやドラマのパロ、歌や曲とあわせたイメージイラスト、変なギャグや4コマ漫画、果ては俳句や短歌からクイズ、占いに至るまで・・・誰得な産物のオンパレードです。もう毎日無我夢中です。お蔵入りになったネタも結構あり、今それらを見るともうホント恥ずかしくて笑ってしまいますが・・・
しかしこのようなものでも通じる人がいる、ということが楽しくてたまりませんでした。このおかしなハイテンションなエネルギーは長い時を経て、ジャンルは移り変わっても、ブランクはあっても、私の中で少なくともまだ「やりたいことがある、表現したいものがある」という創作活動の原動力になっていることは確かだと言えます。

「ドカベン」は何と言ってもプロ編に入るまでが好きです。特に明訓高校に入った一年目の夏が大好きです。コミックスでいえば16巻、土佐丸との準決勝は読みすぎて、もうコミックスがボロボロになってしまいました。この頃の、いわば一昔前の高校野球という感じは今の高校野球にはもう感じることができなくなりました。今の高校野球はもっとずっとスマートになりましたね。甲子園球場もすっかり綺麗に変わってしまいました・・・
高校野球一辺倒だった私にプロ野球の魅力を教えてくれたのが、「あぶさん」と「野球狂の詩」でした。「野球狂の詩」は一つ一つのエピソードが珠玉です。義理、人情とプロ根性とは何かということをベタなストーリーで語ってくれます。昭和の香りプンプンです。歌舞伎の女形でありながら、スラッガーであるというトンデモ設定の国立玉一郎が大好きです。これはアニメにもなり(それもちょっと大人向けの、時間帯も確か遅かった)、こちらも原作が結構忠実に再現されていて好きでした。OPやEDの曲も良かったです。今でもたまにyoutubeで見かけて、懐かしくって感動しています。
「あぶさん」は南海ホークスの時代から始まって、これも強烈な昭和の香りに加えてベタベタな大阪の香り、それなのに何故か大人っぽく、そしてこれまたプロ野球とは何たるか、ということを私に教えてくれました。大人(オジサン)のあぶさんは高校球児とはまた違う魅力があふれています。特に未亡人と恋に落ちる「麻衣子」のエピソードはそういう一面を覗かせてくれて、ちょっとドキドキしました。
他にも「一球さん」「男どアホウ甲子園」「球道くん」など、野球漫画といえば水島新司といわれるくらい数多くの野球漫画を描かれていますが、よくもまあこんなに様々な展開を考えられるものです。いやほんとすごいです。本当に、作者の野球への愛があふれています。

水島漫画のおかげで野球の魅力を知り、そして二次創作の魅力を知りました。本当に感謝しても感謝しきれないくらいです。


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